カホちゃんをいじめたCを例に取り、中学生の女の子向けに、点数化のための誘導文と、意識の集中のための誘導文を作成せよ。注意点に留意せよ。

1. 点数化のための誘導文

1-1. 出来事の記憶

a. 映像の記憶

「その場面の映像の記憶がどれくらい鮮明に残っているかを、点数で表して欲しい。たとえば、今、僕の顔とかお母さんの姿とか、この部屋の風景とかを、眼で見てるぐらいにその場面の映像の記憶を鮮明に思い出せるっていうのを、10点満点で10点とするね。
逆に、その場面の映像を全く思い出せないっていうのを0点とすると、その場面の映像の記憶の鮮明度は今何点?」

b. 音声の記憶

「その場面の音声の記憶がどれくらい鮮明に残っているかを、点数で表して欲しい。たとえば、今、僕が話している声を、耳で聴いているようにその場面の音声の記憶を鮮明に思い出せるっていうのを、10点満点で10点とするね。
逆に、その場面の音声を全く思い出せない、聴こえないっていうのを0点とすると、その場面の音声の記憶の鮮明度は今何点?」

c. 痛覚の記憶

「その痛みの記憶がどれくらい鮮明に残っているかを、点数で表して欲しい。たとえば今、この場で後ろから蹴りを入れられたのと同じぐらい、その瞬間の痛みを強く感じられるっていうのを、10点満点で10点とするね。
逆に全く感じられないっていうのを0点とすると、その痛みの記憶の鮮明度は今何点?」

d. 感情

たとえば恐怖なら、「腹を空かせた人喰いトラの檻に入れられて足腰立たないっていうくらい恐いのを10点とするね。」
たとえば怒りなら、「はらわた煮えくり返って包丁もって今すぐそいつを刺し殺しに行きたい、っていうくらい怒りが湧いてくるのを10点とするね。」
などと、うまく子供が想像し、点数化しやすいように点数の概念を例示します。
ひとつの出来事について複数の感情が出てくることがよくありますが、個々の感情についてすべて個別に点数化します。
身体感覚が出てくることもよくあります。これも感情と同じように扱います。胸が締め付けられる感じ、切なさ、呼吸がつらい、背中に違和感、などです。(痛覚の記憶とは区別します)
感情ではない感覚(存在感や圧迫感、胸が締め付けられる感じ、切なさ、呼吸がつらい、背中に違和感、など)が出てくることもよくありますが、これも感情と同じように扱います。

子供にはこのように質問します。

新井 「その場面の記憶をよーく思い出すと、今、どんな風に感じる?どんな感情がある?」
子供 「あの時は凍りついたんだけど…」
新井 「あの時は凍りついたのか。今は?今この場でどんな風に感じる?」
子供 「今?今は…何でそんなこと言われなきゃならないんだろう、って」
新井 「その気持ちの強さをを10点満点であらわすと、今何点?」
子供 「8点」
新井 「8点ね。他に感じるものはない?」
子供 「…何か胸のこのあたりにウーンっていうものがある」
新井 「その胸に感じる感じの強さは10点満点で何点?」
子供 「8-9点ぐらい」
新井 「胸のウーンが8-9か。他に感じるものはない?」
子供 「…何かうまくいえないけど…なんていったらいいのかな…」
新井 「…スッキリしない?何かイヤな感じ?モヤモヤ感とか?」
子供 「…そう…モヤモヤかな」

子供がうまく言語化できないときは、カンを働かせて言語化をサポートしてあげます。

1-2. 人物の記憶

a. 顔の記憶

「Aさんの顔の映像の記憶がどれくらい鮮明に残っているかを、点数で表して欲しい。たとえば、今、僕の顔を見てるぐらいにAさんの顔を鮮明に思い出せるっていうのを10点満点で10点とするね。
逆に全く思い出せないっていうのを0点とすると、Aさんの顔の記憶の鮮明度は今何点?」

ここは証明写真的な顔の記憶を尋ねていることを念頭においてください。

b. 声の記憶

「Aさんの声の記憶がどれくらい鮮明に残っているかを、点数で表して欲しい。たとえば、今、僕の声を聴いているようにAさんの声を鮮明に思い出せるっていうのを、10点満点で10点とするね。
逆に全く思い出せないっていうのを0点とすると、Aさんの声の記憶の鮮明度は今何点?」

子供には「セリフとしての文字情報の記憶ではなく、声の記憶」を尋ねていることを伝えます。

c. 感情

一人の有害人物に対して複数の感情が出てくることがよくありますが、個々の感情についてすべて個別に点数化します。
身体感覚が出てくることもよくあります。これも感情と同じように扱います。

子供にはこのように質問します。

新井 「Aさんの記憶をよーく思い出すと、今、どんな風に感じる?Aさんに対してどんな感情がある?」
子供 「イライラしてくる」
新井 「そのイライラを10点満点であらわすと、今何点?」
子供 「8点」
新井 「8か。他に感じるものはない?」
子供 「見たくない。話したくもない」
新井 「そうなって当たり前だわ。見たくないのは何点?」
子供 「10」
新井 「他に感じるものはない?」
子供 「…もうないかな…」

「もうない」という返事が返ってくるまで「他になにか感じることは?」と質問を繰り返します。
「もうどうでもいい」とか、否定的でなかったり悪影響がなさそうな感情や考えは点数化する必要はありません。

2. 意識の集中のための誘導文

この意識の集中のさせ方で、点数の低下が全く変わってきます。TFTの使いこなしに当たる部分ですので、臨床経験がモノを言います。
私のやり方は、数多くの困難な臨床経験から導き出した「最速の点数低下をもたらす」誘導です。

2-1.出来事

モデルケースを使ってみましょう。カホちゃんが学祭でCとKにものすごい形相でにらまれたときのことを扱うとしましょう。

  • V=8(二人がにらんできた場面の映像の記憶の鮮明度)
  • A=7(同じ場面の音声の記憶の鮮明度、この場合は周囲の物音と、CとKがカホちゃんに毒づく声)
  • P=6(この場面でCが右足を蹴ってきていたとする)
  • D=9(恐怖、CとKへの恐怖は分離できないとする)
  • D=7(圧迫感、CとKからの圧迫感は分離できないとする)

だとします。

なお、にらまれたのと蹴られたのがシーンとして分離できるなら、別々に扱います。ここでは、同時のために分離できないものとして扱います。

a. 感情

たとえばこういう風に集中してもらいます。恐怖の方が点が高いので、先に恐怖に集中します。

まず今8点分残っているこの場面の映像の記憶をよく思い出して。周囲の風景をよく思い出して。
(5秒ぐらい)

次にCの姿に意識を集中して。他の人は放っておいて、Cだけね。
(5秒ぐらい)

次にCの顔と表情に意識を集中して。このときどんな顔つきだったかよく見て。どんな表情をしていたかよく見て。
(5秒ぐらい)

そしたらCの眼に意識を集中して。どんな眼でにらんできたか、目つきをよく見て。
(5秒ぐらい)

次に、7点分残っている音声の記憶を思い出して。まず周囲の騒音だよ。その音をよーく聴いて。
(5秒ぐらい)

そして、Cの声に意識を集中して。どんな声だったか。どんな風に毒づいたか。Cの声だけよく聴いて。
(5秒ぐらい)

次に、その現場で自分がどう感じたか、思い出そうとしてみて。実際には思い出せなくてもいいので、感情の記憶を思い出そうとしてみて。
(5秒ぐらい)

そしたら今感じられる感情をよく感じて。恐怖、圧迫感。その中で、恐怖に意識を集中して、よく感じて。つらいかもしれないけど、恐怖をよく感じて。
(5秒ぐらい)

ゆっくり語りかけてあげてください。でもゆっくり過ぎてもいけません。ひとつの部分に集中させるのは5秒ずつぐらいが適当だろうと思います。

痛覚の記憶は、ここではトレースしなくても結構です。

このように語りかけた後、タッピング(トラウマのアルゴリズム、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれか)を行います。恐怖の方が点が高いので、恐怖が先に0点になるまでトラウマのアルゴリズムか、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれかを繰り返します。

恐怖が0点になった時点で、圧迫感が3点残っていたとします。これももちろん0点になるようにタッピングを行います。このときの意識の集中は、次のようにします。

まず今残っているこの場面の映像の記憶をよく思い出して。周囲の風景をよく思い出して。
(5秒ぐらい)

次にCの姿に意識を集中して。他の人は放っておいて、Cだけね。
(5秒ぐらい)

次にCの顔と表情に意識を集中して。このときどんな顔つきだったかよく見て。どんな表情をしていたかよく見て。
(5秒ぐらい)

そしたらCの眼に意識を集中して。どんな眼でにらんできたか、目つきをよく見て。
(5秒ぐらい)

次に、今残っている音声の記憶を思い出して。まず周囲の騒音だよ。その音をよーく聴いて。
(5秒ぐらい)

そして、Cの声に意識を集中して。どんな声だったか。どんな風に毒づいたか。Cの声だけよく聴いて。
(5秒ぐらい)

次に、その現場で自分がどう感じたか、思い出そうとしてみて。実際には思い出せなくてもいいので、感情の記憶を思い出そうとしてみて。
(5秒ぐらい)

そしたら今感じられる圧迫感をよく感じて。
(5秒ぐらい)

映像と音声ですが、それぞれ8点7点から低下しているはずなので、点数は言いません。

このように意識を集中させ、タッピングを行い、圧迫感をゼロにします。

圧迫感がゼロになったら、「他に今なにか感じることはある?」と質問し、何か別の感情が出てきていないかチェックします。
出てなければ良し、出ていればもちろん点数化して同じように意識の集中を繰り返し、タッピングしてゼロにします。

感情と感覚がすべてゼロになったら、映像・音声・痛覚の記憶の鮮明度の点数を確認します。

V=7
A=6
P=5
に下がっていたとします。

痛覚が5点残っているので、次は痛覚です。
(もし痛覚もゼロになっていたら、次は映像です。もし映像もゼロになっていたら、次は音声です。もし音声もゼロになっていたら、この場面の記憶除去は終了です。)

b. 痛覚

 

まず今7点分残っているこの場面の映像の記憶をよく思い出して。周囲の風景をよく思い出して。
(5秒ぐらい)

次にCの姿に意識を集中して。他の人は放っておいて、Cだけね。
(5秒ぐらい)

次にCの右足に意識を集中して。動きをよく見て。どんなふうに蹴ってきたか。どう右足を動かしたか。1発か2発か。自分の体のどこにヒットしたか。よーく見て。
(5秒ぐらい)

次にCの顔と表情に意識を集中して。このときどんな顔つきだったかよく見て。どんな表情をしていたかよく見て。蹴るときどんな表情だったか。
(5秒ぐらい)

そしたらCの眼に意識を集中して。蹴るときどんな眼だったか。どんな眼でにらんできたか、目つきをよく見て。
(5秒ぐらい)

次に、6点分残っている音声の記憶を思い出して。まず周囲の騒音だよ。その音をよーく聴いて。
(5秒ぐらい)

そして、Cの右足が自分の体に当たったときどんな音がしたか、よく意識を集中して聴いて。
(5秒ぐらい)

そしたら、その現場で蹴られた瞬間にどれくらい痛かったか、どんな衝撃があったか、もう一度感じようとして。思い出そうとして。
(5秒ぐらい)

そしたら今感じられる痛みをよく感じて。痛みに集中して、よく感じて。
(5秒ぐらい)

このように語りかけた後、タッピング(トラウマのアルゴリズム、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれか)を行います。痛覚の記憶の鮮明度が0点になるまでトラウマのアルゴリズムか、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれかを繰り返します。

痛覚の記憶の鮮明度が0点になった時点で、他に何か感じることがないか、別の場所に痛みを感じないかなどをチェックします。
なければ良し、あればもちろん点数化して同じように意識の集中を繰り返し、タッピングしてゼロにします。

感情と感覚、痛覚がすべて0点になったら、ここで、映像と音声の記憶の鮮明度を確認します。

V=6
A=5
に低下していたとします。

映像が6点残っているので、次は映像です。(もしこの時点で映像の点数が0点になっていたら、次は音声です。)

c. 映像

 

まず今6点分残っているこの場面の映像の記憶をよく思い出して。周囲の風景をよく思い出して。
(5秒ぐらい)

次にCの姿に意識を集中して。他の人は放っておいて、Cだけね。もし蹴ってきた足の動きが見えるなら、それをよく見て。
(5秒ぐらい)

次にCの顔と表情に意識を集中して。
(5秒ぐらい)

そしたらCの眼に意識を集中して。どんな眼でにらんできたか、よく見て。
(5秒ぐらい)

次に、10点満点分の正確で鮮明なその場面の映像の記憶を思い出そうとして頭の中で頑張って。周囲の風景をよく思い出そうとして。Cはどこにいたか、思いだそうとして。
(5秒ぐらい)

次にCの姿を正確に思い出そうとして。他の人は放っておいて、Cだけ正確に鮮明に思い出そうとしてね。どんな服装をしていた?どんな姿勢で、どんな立ち姿だった?蹴ってきた足の動きはどうだった?鮮明に思い出そうとして。
(5秒ぐらい)

次にCの顔と表情を鮮明に思い出そうとして。どんな顔つきだったか、どんな表情だったかはっきり思い出そうとして。
(5秒ぐらい)

そしたらCの眼を正確に、鮮明に思い出そうとして。どんな眼でにらんできたか、鮮明に思い出せるようにして。
(5秒ぐらい)

このように語りかけた後、タッピング(トラウマのアルゴリズム、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれか)を行います。映像の記憶の鮮明度が0点になるまでトラウマのアルゴリズムか、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれかを繰り返します。

0点とは、真っ白な状態です。

映像の記憶の鮮明度が0点になった時点で、音声の記憶の鮮明度を確認します。

A=4
に低下していたとします。

音声が4点残っているので、次は音声です。(もしこの時点で音声の点数が0点になっていたら、終了です。)

d. 音声

 

まず今4点分残っているこの場面の音声の記憶をよく思い出して。周囲の音をよく思い出して頭の中でよく聴いて。
(5秒ぐらい)

次にCの声に意識を集中して。他の人は放っておいて、Cだけね。にらんできたときにどんな声を出したか、記憶の中に残る声をよく聴いて。
(5秒ぐらい)

次に、10点満点分の正確なその場面の音声の記憶を思い出そうとして。まず周囲の音をよく思い出そうとして。
(5秒ぐらい)

次にCの声を正確に思い出そうとして。他の人は放っておいて、Cだけ正確に思い出そうとしてね。にらんできたときにどんな声を出したか、声の高さとか大きさ、声の強さ、イントネーションとか発音とか。よく鮮明に、今この場で聴いているみたいに思い出そうとして。
(5秒ぐらい)

音声の記憶の鮮明度が0点になったら、この場面の記憶の除去は終わりです。
もし「にらむ」と「蹴る」場面が分離できるなら、時間的に先の方(古い方)を先に除去し、時間的に後の方を後に除去します。

このようにCが絡んだ出来事をすべて除去します。直接見聞きしていないことも含めてすべてです。
出来事の記憶を全て除去したら、次はCの顔と声、感情です。

2-2. 人物

モデルケースを使ってみましょう。まずCから扱います。

  • V=5(Cの顔の映像の記憶の鮮明度)
  • A=3(Cの声の記憶の鮮明度)
  • D=3(恐怖)
  • D=2(疑問感、「何で私をあんなに嫌ったのかなあ」)

だとします。

まずは感情からです。

a. 感情

 

まず今5点分残っているCの顔の記憶をよく思い出して。顔全体をよく思い出して。
(5秒ぐらい)

次にCの眼に意識を集中して。眼をよく見て。
(5秒ぐらい)

次に、3点分残っているCの声の記憶を思い出して。どんな声だったか。声の高さとか、発音の癖とか、よく聴いて。
(5秒ぐらい)

そしたら今Cに対して感じられる恐怖をよく感じて。疑問感は放っておいて、恐怖に意識を集中して、よく感じて。もう弱くなってきているかもしれないけど、メチャクチャ怖いつもりで恐怖をよく感じて。
(5秒ぐらい)

このように意識を集中させて、タッピング(トラウマのアルゴリズム、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれか)を行います。恐怖の方が点が高いので、恐怖が先に0点になるまでトラウマのアルゴリズムか、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれかを繰り返します。

恐怖が0点になった時点で、疑問感が3点残っていたとします。これももちろん0点になるようにタッピングを行います。このときの意識の集中は、次のようにします。

まず今残っているCの顔の記憶をよく思い出して。顔全体をよく思い出して。
(5秒ぐらい)

次にCの眼に意識を集中して。眼をよく見て。
(5秒ぐらい)

次に、残っているCの声の記憶を思い出して。どんな声だったか。声の高さとか、発音の癖とか、よく聴いて。
(5秒ぐらい)

そしたら今Cに対して感じられる疑問感に意識を集中して、よく感じて。1点しかないけど、よく感じて。
(5秒ぐらい)

顔と声ですが、それぞれ5点3点から低下しているはずなので、点数は言いません。

このように意識を集中させ、タッピングを行い、疑問感をゼロにします。

疑問感がゼロになったら、「他に今なにか感じることはある?」と質問し、何か別の感情(もしくは感覚)が出てきていないかチェックします。
出てなければ良し、出ていればもちろん点数化して同じように意識の集中を繰り返し、タッピングしてゼロにします。

感情(および感覚)がすべてゼロになったら、顔と声の記憶の鮮明度の点数を確認します。

V=4
A=2
に下がっていたとします。

顔が4点残っているので、次は顔です。

b. 映像

 

まず今4点分残っているCの顔の映像の記憶をよく思い出して。顔全体、顔の輪郭、鼻、口、耳、肌、髪、おでこ、眉、そういった各パーツをよく見て。

次に眼。眼をよく見て。

次に、10点満点分の正確なCの顔の記憶を思い出そうとして頭の中で頑張ってみて。全体の輪郭、顔の骨格、顔の形、あごのライン、肌の色、肌の肉付き、鼻の形、鼻の高さ、口の形、唇の厚さ、耳の形、耳の大きさ、髪の長さ、髪の色、髪型、おでこ、眉の形、眉の太さ…

次に眼、眼の形、眼の大きさ小ささ、くぼんでいたか出ていたか、垂れていたか吊上がっていたか、寄っていたか離れていたか、瞳の色はどうだったか、Cの眼を鮮明に思い出そうとして。

ここは5秒より必然的に時間が少しかかります。

このように語りかけた後、タッピング(トラウマのアルゴリズム、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれか)を行います。顔の記憶の鮮明度が0点になるまでトラウマのアルゴリズムか、新井式アルゴリズム、鎖骨呼吸法のいずれかを繰り返します。

0点とは、顔が全く思い出せない状態です。

なお、なぜか髪だけは映像が無くならない場合があります。金髪だったり、特徴的な髪型だと無くなりにくいようです。そういう場合は髪だけ残ってもよしとします。
あるいは特徴的なメガネも同様です。

顔の記憶の鮮明度が0点になった時点で、声の記憶の鮮明度を確認します。

A=1
に低下していたとします。

次は声です。

c. 音声

 

まず今1点分残っているCの声の記憶をよく思い出して。その声を頭の中でよく聴いて。それからCの声の特徴をよく聴いて。
(5秒ぐらい)

次に、10点満点分の正確なCの声の記憶を思い出そうとして頭の中で頑張ってみて。眼の前で聴いているみたいにできるだけ鮮明に声を思い出そうとして。
(5秒ぐらい)

声の記憶の鮮明度が0点になったら、Cの記憶の除去は終わりです。
ですが、Cは悪質なので、不安(恐怖、嫌悪)を徹底的に除去します。

私はよく次のような状況を想定させて、出てくる不安を全て除去します。

「もし街中でバッタリ会ったとしたら?」
「もし駅で見かけたとしたら?こっちに気づいてじっと見てきたとしたら?」
「今、Cがどんな用事かしらないけど何かの用事でカホちゃんに会いに、この家の門のところまで来たとするね。門のところに立ってじっとこの部屋の方向を見ているとするね。するとどう?」
「今、Cがカホちゃんに会いに玄関を勝手に開けて、家に勝手に上がり込んできたとするね。するとどう?」
「今、Cがこの部屋のドアの前に立って、開けて入ろうとしているとするね。ドアを開けてカホちゃんの方をじっと見ているんだ。するとどう?」
「今、Cが部屋に入ってきて、カホちゃんの真横に座って身体をぴったり密着させてきて、じっとカホちゃんを見て、何か言おうとしているとしたら?」

出てきた不安は出来事の感情と同じように扱って除去します。

カホちゃんの再登校をデザインせよ。またひとつの出来事の記憶の除去に20分かかるとして、概略のカウンセリング時間も算出せよ。

A. 再登校のプランとデザイン

記憶除去の法則に基づいて、カホちゃんの不登校解決計画を立て、再登校をデザインしてみましょう。

デザイン(design)とは、設計する、仕組む、という意味です。
日本語ではファッションデザインなどと使われますが、意味は少し違います。

不登校の解決はある程度計画的に「狙ってできる」ということです。偶然に頼るのではなく。機械を作るのではないのでもちろんある程度ですが。

なお、実際に私が昔カホちゃんに行ったカウンセリングと内容は違います。「今初めてカホちゃんと出会ったならこうする」ということです。

ではカホちゃんの不登校解決計画を立ててみましょう。大まかに示します。7段階に分かれます。

  1. 1. 一番最初にストレスを与えた人物の記憶から除去する。☆出来事優先除去の法則を適用。
  2. 2. 二番目にストレスを与えた人物の記憶を除去する。
  3. 3. 三番目にストレスを与えた人物の記憶を除去する。
  4. 4. 過去の記憶の総チェック他に何か対人関係のストレスを受けていないかをチェック。パンドラ効果に注意。ここまでが過去の対人関係の記憶を除去する、というステップになります。次からは再登校促進のためのステップです。
  5. 5. 再登校の障害となっている不安感の除去カホちゃんが訴える不安などを除去します
  6. 6. 現在の中学での友達作りの促進仲良くなれそうな女の子に対する気兼ねや遠慮、不安への適切な対応
    *友達作り促進ですが、私ができるのはあくまで手助けです。今の教室で全く孤立無援という場合は厳しいです。
  7. 7. 家庭環境へのケアギクシャクした家庭へのケア、カホちゃんへの配慮と理解
    特に祖父母の世代は不登校を怠けとみなし、子供へきつく当たります。そこへの配慮を求めます。

手順は次のようになります。

  1. 1. Cの記憶の処理
    1. 1-1. C絡みの出来事の記憶の処理
      1. 1-1-1. 初めてCとケンカした時のこと感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      2. 1-1-2. 3人がカホちゃんを避け始めた時のこと感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      3. 1-1-3. テニス部でのいじめ感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      4. 1-1-4. 学祭でのCのにらみ感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      5. 1-1-5. 合唱コンクールでのCのいじめ感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      6. 1-1-6. その他C絡みで憶えていることがあれば処理
    2. 1-2. Cという人物の記憶の処理感情の処理→顔の記憶の処理→声の記憶の処理
  2. 2. Kの記憶の処理
    1. 2-1. K絡みの出来事の記憶の処理
      1. 2-1-1. 3人がカホちゃんを避け始めた時のこと感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      2. 2-1-2. テニス部でのいじめ感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      3. 2-1-3. 学祭でのKのにらみ感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      4. 2-1-4. 合唱コンクールでのKのいじめ感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      5. 2-1-5. その他K絡みで憶えていることがあれば処理
    2. 2-2. Kという人物の記憶の処理感情の処理→顔の記憶の処理→声の記憶の処理
  3. 3. Yの記憶の処理
    1. 3-1. Y絡みの出来事の記憶の処理
      1. 3-1-1. 3人がカホちゃんを避け始めた時のこと感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      2. 3-1-2. テニス部でのいじめ(C,Kとくっついていた場面)感情の処理→映像の記憶の処理→音声の記憶の処理
      3. 3-1-3. その他Y絡みで憶えていることがあれば処理
    2. 3-2. Yという人物の記憶の処理感情の処理→顔の記憶の処理→声の記憶の処理

    *Yは実際にはカホちゃんに悪さはしていなかった(C,Kにくっついていただけ)ため、実際の処理はあっさりしたものになります。

  4. 4. 過去の記憶の総チェック他に何か対人関係のストレスを受けていないか(パンドラ効果のチェック)ここまでが過去の対人関係の記憶のストレスを処理する、というステップになります。次からは再登校促進のためのステップです。
  5. 5. 再登校の障害となっている不安感の処理
    1. 5-1. 明日学校へいくとクラスメートがみんな敵じゃないかという不安の処理
    2. 5-2. 自分の存在感や教室での居場所がなくなっていてまた一人ぼっちじゃないかという不安の処理
    3. 5-3. 先が見えない感じの処理
  6. 6. 現在の中学での友達作りの促進誘ってくれる、仲良くなれそうな女の子に対する気兼ねや遠慮、不安への適切な対応*友達作り促進ですが、私ができるのはあくまで手助け、背中を押すことです。今の教室で全く孤立無援という場合は厳しいです。
  7. 7. 家庭環境へのケアギクシャクした家庭へのケア、カホちゃんへの配慮と理解
    特に祖父母の世代と同居している場合、彼らは不登校を怠けとみなし、かなり子供へきつく当たり傷つけます。そこへの配慮を求めます。カホちゃんは再登校の意志が強くあったので、4か5で学校へ自発的に行くでしょう。
B. 時間の算出

1. 基本必要値の算出

現状の聴取、不登校の経緯の聴取と、過去の記憶の質問で、6時間かかったとします。

第3段階(Yの記憶除去)までで17あります。
第4段階で3つ発見されたとします。
第5段階で3つです。

記憶除去と不安除去で計23あります。
23×20分=460分(8時間)

第6,7段階で3時間程度かけるとします。
つまり、計16時間という計算になります。
(カウンセリング中の休憩時間は考慮していません)

2. 余裕値の算出

設計は、余裕を必ず見ます。

特に、過去の記憶は1回のカウンセリングではすべて出てこない、というケースがほとんどですので、50%ほどの余裕は必ず必要です。

つまり16時間の50%増ですので、必要時間の目安は24時間ということになります。

私は1回のカウンセリング時間を5時間としていますので、必要回数の目安はカウンセリング5回となります。
子供によっては1回1時間でギブアップ、という子もいますので、回数としては確定できません。

次の人の過去のストレス履歴を推定せよ。病院の検査では異常なしとする。

次のような症状の不登校児(女)
小2で腹痛を訴え短期の不登校に。徐々に再登校。中学に入り吐き気を訴え、
朝起きられなくなりまた不登校に。対人恐怖と落ち込みが激しく親とロクに口もきかない。
「みんな信じられない。あたしなんて死んだ方がいい」と言う。
ひどい頭痛と心身のダルさの成人女性(30歳、未婚OL)
突発性難聴になった男性ピアニスト(40歳、未婚)

解答 ①

まず、小学校での腹痛は
「いじめ、暴力、暴言など、誰かから嫌われた」
という、クラス内の人間関係からのストレスが推定される。
当然先生も含まれる。

小3から小6までは不明だが、同じ人物からのストレスは充分懸念される。

吐き気は、
「無視、疎外、仲間はずれ」
朝起きられないのは
「いじめ、立場が上の人間からの強いストレス」
が推定される。

対人恐怖はいじめ、落ち込みと人間不信からはウソ、悪口、裏切りがあったものと推定できる。

小学校が同じだった子からの仲間はずれ、無視、いじめなど、あるいは
中学に入ってから仲良くなった子の裏切りを推測してカウンセリングに望まなければならない。

解答 ②

この女性に不登校経験がないならば、家庭内の不和(主に両親の不和)が推定される。

女性に頭痛持ちは多いが、私が直接尋ねた限りの全員に、両親(祖父母も含む)の不和の鮮明な記憶があった。
(父が母を罵倒していた、殴っていた、包丁を持って殺そうとしていた、祖父母と険悪だった、など)
また、頭痛が出始めた時期によって、学校、職場での人間関係の悪さを推定する。

身体のダルさは、学校もしくは職場での強いストレス(主に直接受けるいじめ、叱責や背信など)を推定しなければならない。

解答 ③

ピアニストで、外傷性難聴でないならば、
・親からの罵倒
・ピアノ教師からの罵倒、批判
・評論家や聴衆などからの批判、低評価
を推定する。

愛子さまの不登校に関し、

学習院は東宮会見に反論、「愛子さまは直接いじめの標的となっていない」と発表したが、
これは真実か虚偽か判断せよ。またその根拠も述べよ。
東宮批判を行った教育評論家、社会学者の考えを論破せよ。
愛子さまに今後起きうる悪い事態を予想せよ。またその根拠も示せ。

解答 ①

大人の口はウソをつくが、子供の身体はウソをつかない。
腹痛は「いじめ、悪口、暴力、誰かからの嫌悪」を本人が直接受けたことによって発症する。
したがって学習院の発表は虚偽であると判断する。

なお、学習院の発表通りなら、愛子さまの身体症状は頭痛になるはず。頭痛は、本人は何も直接されていないが、周囲の人間環境が悪いことを示す。

解答 ②

  • 子育ての問題と不登校の問題は異なり、混同すると解決の糸口すらつかめない。
    皇太子同妃両殿下への批判的な言及も見受けられるが、この問題の本質はいじめと不登校であり、子育ての問題ではない。
    しかもいじめの解決と不登校の解決は全く別であり、いずれも子供の意志の力で解決することができない。
  • 不登校の初期段階に現れる身体症状(腹痛頭痛など)は、今強いストレスを受けていることを知らせる重要なシグナルである。愛子さまは大変活発な性格のようだが、そんな子でも暴力的な対人関係のストレスには耐えられないことを、身体がちゃんと示している。これは「ヘルプ」と解釈すべきで、「免疫がない」は身体症状の解釈を完全に間違えている。
  • いじめを行い、不登校を生む子は、罪悪感を感じていない。相手が抵抗しようがしまいが、執拗にいじめる。
    「子供同士で解決を」という人がほとんどだが、すでに身体がヘルプの意思表示をしている子供に何をさせようというのか。
    愛子さまが“やめて”と言えば相手は乱暴をやめるだろうか?
    批判者は8歳の子供にどれほどの完璧を求めているのか。
  • 加害者擁護が過剰である。たとえ子供でも「それはやってはならない」と、大人がキチンと指導しなければならない。これを行わないのは大人の責任放棄以外の何物でもない。
    また、学校には安心安全な学習環境を提供する義務があるが、これも軽視されている。
  • 全体的に、成長を期待し子供に任せるべきことと、大人が導くべきことが区別できていない。子供にはかけて良いストレスと、かけてはいけないストレスがある。
  • 不登校の原因は意志の力でコントロールできない。特に小学生の不登校は、大人(親)が積極的に関わらないと解決できない。

解答 ③

  1. 1. 身体症状が残る。不登校の原因は不安ではない。記憶が弾丸となって不登校と身体症状を引き起こす。この場合、乱暴を受けた場面の記憶と、相手の子の記憶である。8歳だと記憶が消える(健忘する)可能性も少なからずあるが、もし残ると、将来に渡っても身体症状が愛子さまを苦しめるだろう。
    腹痛が消えると、別の問題に形を変える。いじめで不登校になった子は、たとえいじめがない学校へ転校しても、多くが再び不登校となる。原因は、脳に保存された「いじめられた記憶」である。したがって、いじめの解決と不登校の解決の二つを考えなければならない。
  2. 2. 人間不信になる可能性がある。幼児期から中学生ぐらいまでの記憶が、人間の身体・精神・知性・行動の発達に重大な影響を与える。ウソと裏切りは子供の精神への悪影響が深刻である。
    学習院の発表は虚偽であると考えられるので、愛子さまの人間不信を引き起こす可能性が高い(「大人はウソをつく、信じられない」)。

松江市で中学生のいじめを撮影した動画がネットに流れるという異常事態が起きた。
すべての子がいじめや対人関係のストレスを受けることなく、安全安心に勉学に励める学校環境を実現するにはどうすればよいか。あなたが日本国の総理大臣、文科大臣、学校長になったつもりで考えよ。

私の解答は本の中に記しました。みなさんもご自身で考えてみてください。