強いストレスと解離性障害による不登校 女子中学生SKさん Vol.14
「明日学校に連れてって」
(2010/9/9)
新井先生訪問日。
前回までとは確実に違って、自室でこちらに来ようかと、ウロウロする姿が見えたが、先生とはお会いできなかった。
先生には、父親にもカウンセリングを受けさせたいとの相談をする。
SKの記憶除去は10個近くをやり、調子はいい。自己分析もどんどんできるようになり、今の感情をうまく私に伝えることができるようになる。その中で今までとは違う新たなストレスが出てきて課題が増える。
父親にカウンセリングの説得が進み、SKの記憶除去をしている姿も良くなっていく姿も見ていたので、やってみるという感情が出てきたらしい。
父親と彼の記憶の話をすると、大変恐ろしかったであろう記憶が出てきて、驚き、新井先生に相談。
新井先生からは「”あなたのために”と言うとやらないけれど、”私たちのためにやって”と言うとうまくいくかも」と教えていただき、そのように誘導する。
(2010/9/16)
SKのストレスに感じる対象が50人を超えてきて、
“親としてSKをなんという環境に置いていたのか。ストレスから逃げることはできないが、ストレスを逃す術を与えてあげられるのは親しかいないのに”
と、反省し通し。
親は変わる必要はないと新井先生は言われたが、一緒に記憶除去を続けるうちに、SKがどのように感じ、どのように学校や塾、習い事の教室で過ごしてきたかということがつぶさに分かって、徐々に母となりも変わってきたように思う。
SKは記憶除去でストレスを逃すと同じストレスには強くなれるようで、未だに歩いていると知らない人に声をかけられたりするのだが、平気で返答をするように。犬の病院でもはきはきと受け答え。あんなにTFTで苦労した習い事を家で3カ月ぶりにやる。
この日、サポート校の先生の訪問にSKは泣きだしたものの、タオルで隠した顔は見せることはできなかったが、泣きながら
「私は学校に行くことの次に人に会うことができません。当分、会えません。ごめんなさい」
と言う。
今まで人に対してはっきりとマイナスの表現をできなかったので、「会えません」と言ったときには驚いた。
その日、「明日学校に連れてって。」と言ってからすぐに顔が曇り、「やっぱり声に出したらダメみたい。でもあの先生に会えないと言えたのは記憶除去をやったからだ」と言う。
その後、疲れが出たのか機嫌が悪く、話さないで部屋に閉じこもったSKを、主人がひっぱり出してもめだしたが、今までと違い、「TFTはやるよ」。
父親もその声に買い物に出かけるという気遣いを見せてくれ、SKと記憶除去をする。
どうやろうかと思ってPCを眺めていたら「書いてあるのを端からやろうよ。全部消してから思い出すこともあるかもしれないし」とSK本人が提案してきた。
解説
SKさんは目鼻立ちのハッキリしたハーフのような美少女故か、外を出歩いているとなぜかしょっちゅう知らないオジサンに声をかけられ、「これあげるよ」といきなりアメをもらうようなこともしばしば、だったそうです。
しかも学校でも、クラスメイトの男子から「SKはおれのモノだ」とみんなの前で言われたり。これは半分冗談めかしていたようですが。
そういった記憶も、外出を阻むストレスになっていたことと思います。
こうして文章にすると、SKさんの改善具合がつぶさにわかります。
・ハキハキ受け答え
・感情をきちんと表現し、そのために自分はこうする、とハッキリ言明する
・ストレス除去にポジティブに取り組み始める
それに呼応するかのように、お母さんの考えも深まり、気づきが増えてゆく。
まさしくすべてがかみ合い、好転の歯車が回り始めました。
さて、お父さんの幼い頃の「大変怖ろしかったであろう記憶」のことは、お母さんからメールで教えていただきました。
そのメールの文面を読んだとき、我が目を疑いました。
「現代社会でこんなひどいことがありえるのか?信じられない…」
私はこれまで集団リンチや性犯罪、暴力など凄惨なトラウマを何度も治療してきましたが、そういった暴力的なトラウマとは全く異質な、どう表現して良いのかわからないほど猟奇的だったのです。
(この話はお母さんも本当かどうか疑い、お父さんご自身も「なんで今思いだしたんだ?7歳の頃、本当にこんなことがあったのか?おれは嘘をついているのか?」と真剣に悩んでしまったそうです。)
そしてメールを読んだだけでそのイメージの情景が私の頭から離れなくなり、不快感に襲われ始め、これはまずいと思った私は、自分自身にトラウマ治療を行いました。
お母さんからのメールを読んだ場面の、映像の記憶を除去したのです。
メールの文面、
メールソフトの画面、
パソコンの画面、
その場の風景…
すべての映像の記憶です。
これで不快感が消え、普通にメールを読むことができました。
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これがトラウマの治療の最も良いやり方です。
不快感よりも先に、それを生んだ根本原因、つまりメールを読んだときの記憶に焦点を当てるのです。
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それにしても、「もし幼い子供がこんな情景を眼にしてしまったら、精神の成長にどれほど悪影響があるだろう」と思わざるを得ず、
また、「こんな記憶をお父さんが抱えて生きてきたのなら、そりゃ今のようなうつ状態になっても、全くおかしくない」とも考えました。
そして、その日のうちに、お母さんがインストラクター役となって、お父さんにその記憶の除去を試みたそうです。
しかもその記憶を思い出しただけでお父さんは大変な苦しみようで、「こわい、苦しい」を連発するような状態。
残念ながら夜遅くなってしまい、その日のうちには恐怖感などすべての点数をゼロにすることはできなかったそうですが、
お母さんによると
「朝起きた時に、”まだある?”と聞いたらあるよ!と元気がよく答えられて、
だけどもう全然怖くない。と言うので私の方がびっくりして。。。」
だったそうです(笑)。
これ以降、うつ状態で出社拒否寸前だったお父さんも、ドンドン変化していきます。
お母さんが驚くような「自発的な行動の改善」を見せ始めるのです。
後に、一度だけ私がお父さんを直接カウンセリングさせていただくとこになりますが、その話は次回にさせていただきましょう。