集団リンチによる不登校 女子中学生ESさん Vol.12
勝利のラッパが鳴り響く(11回目カウンセリング)
3週間後、11回目のカウンセリングです。
大きな変化はナシ。しかし顔が変わりました。ずいぶん大人っぽくなったように見えます。
ESさんとお母さんに顔の変化を話すと、意外な話が飛び出ました。
先週、なんとMKからメールが来たのです。「久しぶり」「MDからアドレスきいた」。
MDさんがアドレスをMKに教えたようです。MDさんから「大丈夫だから返事を返してあげてね」とメールが。その直後にMKから来たそうです。
ESさんはもちろんMKに返事はしていません。MDさんにも。
…こういう事があると顔が変わるのか。ある意味大人への成長なのか。私もちょっと不思議でした。
しかしMKは一体どういうつもりなのだろう?また一同「うーん」と考え込んでしまいましたが、結論は出ず。
ここでまた修学旅行の話が出ました。
修学旅行に行かせてあげたい。パティシエの夢をかなえさせてあげたい。
でもこのままでは4月になっても再登校は難しいでしょう。
不安を掘り起こしてキレイにしてあげねば。
私は粘り強く質問を繰り返します。
「学校に戻ったときに人間関係で不安はない?気になることはない?どんなことでもいい。引っかかることはない?」
「先生は?」
「友達は?」
「クラスメートは?」
あらゆる角度から粘り強く質問を繰り返します。ただし勉強は除外。
やっと出てきました。「気になる部分がある」と話してくれました。
MDさんともうひとり、HTさんがESさんと仲良しなのですが、この3人で一緒の時に、MKなどが寄ってきた時が心配なのです。MKが学校へ来ていたらイヤだな、と言います。
これを分析すると、不安は2つに分かれました。
・MDさんとMKが話しているのがESさんには気まずい。
去年のリンチ後、一度だけ再登校したときに、この場面を見て感じた気まずさが、まだ変わらなかったのです(MKの顔を見るのがイヤなのではない、と付け加えてくれました)。
・MKがいるクラスの前を通ることがあるだろう。もし会ったら気まずい。
一つ目の気まずさはD=6-7。二つ目の気まずさはD=1-2。いずれもその場で消すことがまたしても出来ませんでした。
しかし面白いことがありました。一度タッピングしたとき、ESさんはこうつぶやいたのです。
「2人を前にしてどう行動していいのかわからない。自分がジャマかな、と思う戸惑い。これがなければ学校行けるかな」。
学校行けるかな、と彼女自身が言ったのです。今までとちょっと違う。
そこで私はMDさんとMKが話している場面をイメージしてMKに集中することと、「自分ジャマかな」と感じて、トラウマのアルゴリズムと鎖骨呼吸法を毎日1回ずつ行なってもらうことを宿題としました。
次回カウンセリングは、1ヶ月後に設定。
ところが、異変が起きました。
2週間後、お母さんからこんなメールが舞い込んだのです。
お世話になっております。
1月のカウンセリングの後の日曜日、私がお風呂からあがってから、ESから、2月から学校に行きたいと言われました。
カウンセリング後、特に学校に戻るにあたって話し合いをした訳でもないし、ここまで立ち直ってくれたので学校に戻るのをいつにするのかも、本人にまかせてましたので、正直驚きました。もちろんそれ以上に嬉しい一言でした。
前回のカウンセリングでも先生に言われました通り、担任の先生とは15日に時間を調整して頂きましたので、結果ご報告したいと思っております。
昨日はやっと、美容室に行き、愛読している「アゲハ」を持参し、思ったとおりの髪形になったと喜んで帰ってきました。
それでは、来週又連絡させて頂きます。
間に合った。
私はいくつかの注意点をアドバイスしました。そして4日後。
お早うございます。
昨日、約6ケ月ぶりに学校に行って参りました。
担任の先生と今までの簡単な経過と、今後の学校生活に注意して頂きたい件をお願いしてきました。
ES本人の希望で、一緒に学校に行きたいとことだったので、同行させましたが、やはり学校に近づくにつれ、緊張したのでしょうか、校門~正面入口までは「緊張する」や「ドキドキする」など言い初め、職員室にはだいぶ先生方も残ってる雰囲気を感じたようで、近づけず、遠くで待っておりました。
別室で私とES、担任と約30分程度話ました。
担任は一緒に来ると思ってなかったようで、「よくがんばって来てくれたね」と言われ、安心と緊張といろいろ感情があったのか、ずっと泣いてました。
4月の修学旅行(楽しい出来事)があるので、それをメインに不定期でもいいから登校する、無理して登校しなくて良い、授業の遅れは学校生活になれてから十分取り戻せる能力があるし、あせらないで取り組んでいく、
一番重要な対人関係の件も、クラスに2人仲の良い女友達がいるし(修学旅行も同じ班)、他の女の子も何人かESに電話したい、と言って心配してくれた同級生もいるとの事でした。
例のMKについては、もちろん十分注意して今後の学校生活に配慮していただける話し合いでしたので少し安心致しました。
ただ、ES本人はきっと、元の学校生活も思い出して不安になったようで、特別何が、とか理由はないんだけれど、怖いみたいです。
6ヶ月もずっと辛かったのもきっと、思い出したのでしょうか。
とにかく無理しないで、行きたい時に登校するという方向で一歩進むことができました。
ここまでこれたのも、先生のおかげです。本当に有難う御座います。
すこしでもいいから一歩ずつ、ESが前に進めるよう見守っていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。
本人の希望により、1週間後が初登校日となりました。
そして1週間後のお母さんのメールです。
お早う御座います。
昨日は5時間目の授業13:40~にあわせて自宅を出まして、学校に到着したものの、校内に生徒がたくさんいるのを見て、不安になったらしく、教室に入っていなくなったのを確認して校内に入りましたが、やはり自分のクラスに行くまでの間、泣き出してどうしても無理だと言うので、別室(私が待機できるように 学校から設けてもらった部屋)で、気持ちを落ち着かせることにしました。
足が思うように運ばなかったのでしょう。しかし、「帰りたい」とは言わなかったので、無理に引っ張ってつれていくわけにもいきませんから、別室で全然違う話をしたり、ちょっと携帯でテレビを見たりしているうちに、授業おわりかけの5分前に、「教室の前まで行ってみる」といいました。
1時間ほどかかりましたが、やっと6ケ月ぶりに自分の通った教室の前まで行くことができました。授業が終わって、クラスメイトのMDさんとHTさんと他2名の女の子が飛び出して迎えてくれました。
私もその姿を見たときは、さすがに涙が出てしまいました。
教室の中には入ることはできませんでしたが、今日も頑張って行くと言ってますので、まずはご報告いたしました。
エレジーはついに終わった。
天使が高らかに勝利のラッパを鳴らして祝福してくれています。
この2日後が次回のカウンセリングでした。