不登校の3つの因子とは?タイトル画像

第一原因の発見ストーリー Part.2

カウンセラー、惨敗

こうして不登校専門カウンセリング「不登校セラピー」が始まりました。
そして泥沼へ。

なにせ、解決できない。
人が苦しみを感じていない。不安も恐怖もない。なのに彼らは下痢を起こし、頭痛を起こし、朝起きられず、学校へ行けないのです。

そんな子達のコアを探り出すなんて、夢のまた夢。
しょうがないので、親のせいにして、親子関係を疑い、結局何も進まない。

また、いったん再登校できた子も、また精神的に乱れ不登校になることもしばしば。そのことで相談を受けてもなぜ乱れているのか原因がわからないのでアドバイスのしようがなく、親子関係のせいにしてしまう、どうしようもない有様。

私は当時すでに心理療法TFTを修めていましたが、そのTFTが全く歯が立たないのです。私が対応できるのは、不安や恐怖がある子だけでした。

もう看板を降ろそうか、と思ったこともありました。
そして、運命の時が訪れました。

いじめが少年を不登校に…

少年の名はヒロキ君。当時高校1年生。

中2秋よりクラスメイト(元親友)のいじめにあい、同時期に剣道部の同級生から度重なる暴言を浴びせかけられました。

さらに中2の1月から遠征時に下痢を起こすようになり、2年の終わりごろから部の普通の練習にも参加できなくなりました。

中3になりクラスで不良2名が暴れヒロキ君はトバッチリを喰らうように。すると朝に腹痛と下痢が始まりトイレに立てこもり、6-7月から不登校に。登校日になると極度の下痢になり、朝から昼までトイレに数時間こもります。

保健室登校ならできましたが、教室には不良がいるため行けませんでした。ただし休日には下痢の症状は出ません。

もちろん手をこまねいていたわけではありません。内科で「過敏性腸症候群」と診断、下痢止めをもらい続けていますが、“ないよりマシ”という程度の効果。近くの思春期外来でカウンセリングも受けましたが、こちらは全く効果なし。

高校の入学式には普通に行けましたが、次の日からまた下痢、不登校開始。高校では今のところ林間学校のみ参加。それ以外は授業には全く出席できていません。

退学寸前!

私のところへ初めて来たときは5月。出席日数不足で学校から自主退学の勧告が目に見えてきたという状態でした。

しかし彼は再登校を真剣に望んでいました。友達を作りたい、授業を受けたい、と明言します。家では生活は非常に規則正しく、勉強も自主的に数時間しています。

私のところに連れてこられたお父さんも真剣にサポートします。不登校になった当初はヒロキ君を怒ったようですが、今は味方です。さまざまなところへヒロキ君を連れて真剣に関わり、何とか下痢を治そうとしています。

薬を飲み続けて早1年になろうとしていますが、下痢は治る気配なし。思春期外来のカウンセリングは意味無し。カウンセリングで、根本的な何かの問題を直さなくては、と私のところにいらっしゃいました。

ヒロキ君はしゃべり方はつたないですが、中学時代は明るくスポーツマン(剣道)で、人気者でした。

カウンセラー、惨敗

結局私がカウンセリングを3回して何一つ改善されず。TFTや催眠を含め、当時私が使えるあらゆる技法を下痢という症状に適用しましたが、惨敗。下痢は全く良くなりません。
でも、彼らはちっとも解決できない私のところへ通い続けてくれています。

ほんの少しですが改善はあったのです。私はちょいと知恵を働かせて、彼が学校へは行けるようにしました。退学は免れましたがでも、いい加減下痢をなんとかしないと、もう私のところへ通ってくれなくなるでしょう。

ヒロキ君はいじめのことは、今ではなんとも思っていないそうです。このケースでは言い訳が何一つできません。

つまり、私の得意技である、“解決できないのは私のせいではありませんあなた方の親子関係親の育て方子供の心の弱さ性格が原因ですだから悪いのはお前たちだよ攻撃”が封じられたのです。

私以外にもこの技大好きカウンセラーは大勢います。精神論も根性論も得意技です。
私は今、過去を振り返ると、親子関係のせいにするってことは解決できない責任を相手に押し付けてきただけだろ?と自責の念に駆られます。

しかし、もう逃げられません。
クライアントの問題を解決できないカウンセラーは、社会のゴミです。自分では役に立っているつもりのゴミ。

私はもうゴミのようになりたくなかったので、必死に考えました。

「なぜ下痢が治らないんだろう。
原因は何なのだろう?
学校へも行きたい、
友達を作りたがっている、
不安もない、
お父さんも真剣に取り組んでいる、
家庭もいい、
医学的な問題もない、
いじめのこともなんとも思っていない、
なのになぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ?
何か残っている要因はないのか?
何かないか?
何かないか?
何かないか?」

そして数日間考え続けるも、何も思い浮かびません。次回は明日なのに、もうダメか。
カンバンをたたもう。

すると、昔の記憶が走馬灯のように次々と思い出されました。「あの子は今どうしてるかな、あの子のカウンセリングはうまく行ったな、あの子のお父さんは面白い人だったな…」

降りてきました。

「記憶が原因じゃないか?」

つまり、
「いじめられた場面の映像や、いじめた奴らの顔などの記憶が残っているはず。
学校へ行こうとすると、脳がその記憶を基に、“危険だ、行くとまた同じ目に会う”と判断して、行かせないために無意識のうちに下痢を引き起こさせているんじゃないか…?」

天啓でした。
記憶原因説の誕生です。

そして同時に解決策も。それは、すでに失敗したTFTをもう一度使う方法でした。一風変わった工夫を加えて…