再登校事例

強いストレスと解離性障害による不登校 女子中学生SKさん Vol.19

実は嗅覚の記憶がネックだった

(2010/11/10)
 
いわきまで新井先生にお会いしに行く。
 
TFTをしてもらう材料はないと思っていたが、いわきまでの特急の中で気持ち悪くなったことを受け、新井先生のカウンセリングで、
・吐くことが今までたくさんあったこと、
・幼稚園でも、お稽古の前にもバスに乗ると気持ち悪くなること、
が新たにわかる。
 
これを中心に、今までの事実だけになった記憶も並行して、もう一度最初からTFTする。
 
毎日制服には軽く着替える。
行こうとして外まで出るがバス停までで行けない。
 
行くまでは調子よく、「行ける。」といい、あまりに言うので私が本当に行けるのかなぁと不審になってしまうほど。私自身が行けなくさせているのかもしれないと考えてしまう。
 
新井先生より、車かタクシー登校にしてみてはというご提案。
 
それに最初は「うん!行く」。時間がたつにつれて「タクシーはやっぱりやめとくわ。タクシーで行ったら皆が何事かと思うからイヤだ」という。これをTFT。
 
別の日、“行ってきます”と言って、私が洗濯物を干している間にさっと出かけたと思ったら、私の出勤までに帰ってこなかったので、後で聞いたら、“学校のバス停までバス1本で行き、そのまま折り返してきた”ということ。
 
違うルートだが、一応学校の近くまでは行くことができた。
 
これもTFTしたからだろうねと言うことになり、今日はだめだったけど明日も行けるよと言って、見守る父親にもTFTを一つだけしませんか?と提案し、TFTをやる。

解説

このときのカウンセリングでわかったのは、

SKさんには「乗り物で酔って吐いた記憶」がかなりあり、
「そのとき乗っていた乗り物の、空間の臭いの記憶」
「吐瀉物の臭いの記憶」
もかなり覚えていた、ということでした。

たとえば、新幹線の車両の臭い。これを聞いたときは驚きました。

私も新幹線にはよく乗りますが、臭いなんてほとんど感じませんし、ましてや悪臭なんて感じません。

吐瀉物の臭いなら、多少は「イメージする程度」ならできますが。。。
しかしSKさんの脳には、嗅覚の記憶がかなり鮮明に刻まれていたのです。

加えてこの当時SKさんの登校を阻んでいたのは、実は嗅覚の記憶でした。

中学までは自宅近くのバス停からバスで登校します。

そのバス停の真横にコンビニがあり、そのコンビニから油ものの不快臭が漂い、くわえてバスの車内の臭い(もあったかな?私の記憶も少し曖昧です)も。

これらが過去の嘔吐の記憶を刺激し、バス停へ近づくことと、バスへの乗車を阻んでいたのです。

もちろんこれらの記憶を除去したから、「“学校のバス停までバス1本で行き、そのまま折り返してきた”ということ」という結果につながったのです。

このからくりに気づいたときには私も感心し、お母さんも、幼少期の新幹線の車両の嗅覚の記憶があることを知ったときには驚いておられました。

今振り返ると、
・SKさんの嗅覚の記憶
・ある女子中学生の、小学校の頃の給食の嗅覚の記憶(未発表事例、再登校は成功)

あたりが、その後、子供の脳に鮮明に刻まれた「五感の記憶の謎」を解き明かす旅の、入り口だったような気がします。

五感の記憶の保存は、私が今も追求し続けている研究テーマです。

なぜならば、人は感情や考え方で歪むのではないからです。

その人の脳が保存している、過去の五感の記憶が、人を歪めてしまうからです。