Mさんは部活のあるトラブルで引きこもりに。

お母さんは地元の某国立大学医学部に相談するものの、「子供本人を連れてきて」の一点張りで、らちがあかず・・・

1 不登校になった経緯ときっかけ

Mさんの家族はお父さん、お母さん、子供3人にいる中の長男でした。

Mさんの家庭は会話が乏しく、お子さんへの共感は全くありませんでした。

さらにご両親ともいい方ではあるものの、お父さんはささいなことで怒る。お母さんは否定や無関心が多い方でした。

 

Mさんが何かを話しても、その会話をうまく共感で受けて、話を膨らませることは、ほぼできませんでした。

Mさんは自分に興味を持ってもらえず、否定され、怒られるということがとても多い幼少期でした。

そして、小学校の中学年ぐらいから、どんどんと自信を失い、学校ではしゃべれない子になっていきました。

 

さらに外ではしゃべれないものの、家の中ではたびたび爆発、切れて、暴れ、弟たちにも暴力を振るう怖いお兄ちゃんになっていきました。

中学ではバスケ部に入るのですが、ここでも劣等感に苛まれていました。

自分が周りから見下されているというふうに周りの言動を受け取るようになっていきました。

 

そして引きこもりの引き金になったのが、ある事件です。

部活の合宿に行き、帰ってくると、地元は台風でした。

そこで学校側が保護者に子供たちを学校まで迎えにきて欲しいとの連絡をしました。

ここでその連絡を受けた、親御様との間に行き違いが発生し、親御様はもちろん全く悪気はないのですが、迎えに行く時間を完全に勘違いし、迎えに行かなかったという事態が起きてしまいました。

 

そして彼はずぶ濡れになって、1人で帰ってきました。

家では迎えにきてくれなかった親御様と激しく衝突、その次の日から、完全なる引きこもりが始まったのです。

 

2 不登校の解決のカギ

解決のカギは複数ありました。

1つ目はMさんが引きこもり後、お父さんに向かって、「怒ってばかりなのは、親としてどうかとおもう。」という短く的確な言葉を言ったことで、お父さんはハッと気づき、それ以降、怒ることはなくなりました。

お父さん自身、会話がうまくできないため、その点は残り続けたままでした。

 

2つ目は、兄弟関係の悩みのカウンセリングです。

Mさんは、小学校時代までは家で荒れ、弟たちにも厳しい怖いお兄ちゃんでした。

引きこもり以降はそのようなことはありませんでしたが、弟2人はまた癖が強い子たちでした。

 

優しくなったお兄ちゃんに対して、話を聞かない、無視する、わがままで振り回す、話を聞いていない態度をとるなどをしてしまっていました。

このためMさんは、「自分の話を弟たちは聞いてない。聞いてくれない。」という不満を溜めるようなことが日常に起きるようになりました。

この点の問題点は、この問題に関わる兄弟間の調整ではなく、その場に居合わせている、この不満を聞くお母さんの聞き方が大きなポイントになりました。

 

兄弟もMさん同様、自己肯定感の低い部分が多々、見受けられ、お母さんの聞き方や共感の問題と密接に絡んでいると思われました。

そこでMさんからの訴えをもとに、弟さんたちへのお母さんの対応を細かく分析指導しました。そうすると徐々にMさんと兄弟間の衝突は減っていきました。

 

3つ目はお母さんの共感力です。最大のポイントはお母さんが意識を切らせず、集中してMさんの話を聞けるようになることでした。

Mさんが話す内容に的確な答え、共感の反応を示せるようになることでした。

まずお母さんは、全く悪意はないのですが、話を聞いていると、子供の話から意識が飛んでしまうことが非常に多くありました。

これはMさんの話しがつまらないのではなく、お母さんの自己肯定感の低さによるものです。

 

そこで解除の技術を駆使しながら、お母さんの自己肯定感を徐々に高めていきました。

またお母さんの問題点として、Mさんの話に深く、うまく興味関心を持てていないことがありました。

これはつまりMさんからすれば、「俺の話ってつまらないのかな。そんなに興味がないような価値がない内容を俺はしゃべっているのかな。」と感じさせることになるために、Mさんの自己肯定感を下げてしまうようなことになってしまうのです。

したがって、お母さんに興味・関心をきちんともてる会話や返事の指導、興味を持てるように自己肯定感をさらに上げていく、解除を何度も行い続けました。

 

そして最大のポイントは、私がMさんの小学校時代から現在に至るまでの苦しみを徹底的に聞き続けたことです。

これだけで数十時間をゆうに超える時間を費やし、Mさんの過去を知り、現在を知り、今どのように自信がないのか、どんな劣等感を持っているのかなど、Mさんという人間を深く知ることに全勢力を注ぎ続けました。

その結果、Mさんはたびたびカウンセリングは中断するものの、必ずまた私を信頼して、再開するというしっかりとした信頼関係を結ぶことができました。

 

現在もカウンセリングは継続していますが、21歳になり、Mさんはようやく外出が可能になりました。

まずはお母さんと一緒に車で外出するところからで、そしてお母さんと一緒にカラオケに行って、歌を歌ってくるなどを徐々に始めました。

 

そしてさらに半年後には、1人で外出することが可能になりました。特にある病院に行って、1人で行って診察まで受けて帰ってくることができた時は、お母さんはとても感動したそうです。

人が多い待合室でも、1人で待つことができ、受付も1人で済ませることができ、医者とのやりとりも全部自分でやることができ、行き帰りも一人ですることができました。

これで引きこもりという問題は解決しました。人の目はまだ気になるものの、人が多いところにも、1人でいくことができるようになりました。

次の目標は働けるようになること、自立できるようになることです。その目標に向かって、また私とMさん、お母さんで深くカウンセリングを続けています。