働くことに恐怖を感じている

引きこもりが働けない理由には、働くことに恐怖を感じているというものがあります。
特に日本という国は働くことを尊いことだと考え、苦労をすることが当たり前という風潮がありますから、働くこと自体が辛く苦しいものだと思っている人が多くいます。
実際に日本の労働環境は厳しいもので、ミスは決して許されず会社のために労働者はすべてを尽くさなければならないものとなっています。

その代わり会社は会社で労働者を一生面倒を見なければ行けない義務を負っていますから、どうしても労働は厳しいものというイメージになってしまうのは仕方ありません。
それに加えて不況の今の時代だと、労働者に対する会社からの扱いも厳しいものとなり、一度そのような苦しい経験をして逃げ出したことがあると、再び働くことが怖いものと思ってしまうのは無理もないことです。

近年でこそしなくて良い苦労はしないほうが良いという当たり前の考えが広まってきましたし、どうせするのであれば楽しく働くほうが良いと考える人も増えてきました。
その一方でまだまだ仕事は辛く苦しいものでないと行けないという考えを持っている人も多く、仕事を選ぶことができない引きこもりの人からすれば、そのような場所に復帰をするのはかなり抵抗のあるものだと言えます。

実際に引きこもりでない人であっても、仕事をやめたいと考えている人がたくさんいる時代だけに、一度引きこもりになってしまった人が再び働くのが難しいのも無理は無いと言えるでしょう。
働けない理由はいくつもありますが、日本社会の労働観が引きこもりの人を追い込んでより働けない状況に導いている現状があります。

働きたくてもできる仕事がない

働くこと自体に恐怖を感じていることに加えて、そもそもまともな仕事がないという問題もあります。
日本は雇用の流動性が極めて低く、簡単に首にならない代わりに簡単に仕事が見つからないという状況になっています。

会社は従業員を簡単に解雇できないから安易に人を取るのを嫌がり、従業員は仕事を失えば新しい職につくのが厳しいから会社の言いなりになるという悪循環が発生しています。
そのような現状では引きこもりをしていた人を取ろうとする企業は少なく、引きこもりでも積極的に採用をするのは余程理解があるか、あるいはまともな人材が集まらない企業ということになります。
仕事を選ばなければあると言っても、労働法を守ってもいないような会社で働くというのは違うものです。

結局の所、最低限まともな仕事を選ぶとなると選択肢がほぼない現状であり、その中で引きこもりに対して働けというのは酷なものだと言えるでしょう。
背に腹は代えられないだけに、ブラック企業でもなんでも働くしかないというのは、仕方のないことではありますが、それはブラック企業に加担をしているとも言えるわけですから、そのような場所で働けばそれで許されるのかという問題になります。

実際に引きこもりの人が働ける場所となれば、ブラック企業が大半となってしまいますので、それらの場所をさして仕事を選ばなければあるというのは、少し傲慢な話です。
これは引きこもりに限った問題ではなく、日本の社会全体に共通する問題であり、働きたくてもまともに働くことができる場所がないため、働けないというのは決しておかしなことではありません。

働かなくてもいい環境にある

引きこもりな人が働けない最大の理由は、働かなくても生きていける環境にあるというものがあげられます。
働かないと生活ができない、生きていけない環境にあれば、本人の意志にかかわらず働かざるを得ません。

しかし、引きこもりの人というのは最低限現状では働かなくても生きていくことができる環境にあるので、他の理由と合わせて働けなくなってしまうということです。
人間誰しも苦しい思いをしたくはありませんから、現状で楽をすることができれば、楽をしようとするものです。

常に自分に厳しく向上心を持って生きている人もいないことはありませんが、大半の人は避けることができる苦しい道があれば避ける人が多いことでしょう。
引きこもりの人はまさにそのような状況にいるだけであり、働かないという選択肢を取れるがために働けない状態となっています。

実際に働かずに済むのであれば、今すぐ仕事をやめて何もしないでのんびりした暮らしをしたいと考える人は多いわけですから、働かずに生きていくことができる状況にある引きこもりの人が働かないことは特別おかしなことだとは言えません。
人間は少しでも生活を楽にしようと様々な物を生み出してきたわけで、最終的には誰も働かずに済む世界こそが理想の世界だと考えることもできます。
このような観点で言えば引きこもりの人が働かない、働けないというのはおかしなことではなく、自然なことになるのです。
もちろん、実際には働けないことによる様々な問題がありますから、今が良いからと言って働かなくていいということにはならないものの、理由としてあげるなら働かなくていい環境があるということになります。

まずは何でも良いので始めること

働けない引きこもりの人が社会復帰を目指すためには、何でも良いから始めることが大事です。
いきなり仕事をするのが大変なのであれば、人の集まるところに出て人とのふれあいをするところから始めるというものがあります。
正社員は厳しくてもアルバイトやパートであれば、選択肢がまったくないわけではありませんから、そのようなものから初めてみるのも良いでしょう。

大事なことはとにかく社会との接点を少しでも持つということにあり、それをしていく内に少しずつ社会に復帰をするめどがたつようになります。
いきなり正社員として登用されることがあればそれに越したことはありませんが、最初から高すぎる目標を立てるのは挫折してしまいやすく、余計に引きこもりを加速させてしまうだけに過ぎません。
些細なことから成功体験を積んでいけば、それが自信に繋がり本人のモチベーションにもなり社会復帰ができるようになります。

また、少しずつでも色んな人とコミュニケーションをはかることによって、そこから仕事を紹介してもらったりきっかけが生まれることもありますから、きっかけを作るという意味でも人と交流をするところから始めるというのは悪いものではありません。
引きこもりの時間が長くなればなるほど、社会復帰をすることに恐怖を感じるようになりますから、最初から高い目標を持つのではなく、できるところから始めていくのがポイントとなります。
焦ってしまえば上手くいくものも行かなくなってしまい、やはり社会復帰は無理だったとなってしまいかねないので、焦る気持ちは抑えて小さなことからコツコツできることをできるだけしていくようにしましょう。

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引きこもりの人が働けないない理由というのは、本人に問題がある場合もありますが、社会全体の問題であるとも言えます。
厳しい環境の中で働いている人は多いわけですから、本人の意志が弱いというのは一つの理由になりますが、働くことを辛く苦しいことだという考えが蔓延している現代の日本社会に問題が無いとは言い切れません。

まともな仕事がないというのも大きな問題であり、引きこもりの人ばかりに責任を押し付けてどうにかなるというものでもありません。
しかし、世の中は簡単に変わるものではない以上、働けない人がなんとか社会復帰をするためには今できることをできるだけ頑張っていくしか方法はなく、焦らずじっくりと前へと進むようにしましょう。