1.不登校になった経緯

Iさんは小6のあたりから、学校で誰とも話をしなくなっていきました。
そして中学の入学式は、誰とも一言も話をせず、暗くて、硬い表情で入学式を終えました。

その後、クラスのザワザワ、ガチャガチャした雰囲気に馴染めず、「クラスの中でやっていける自信がない。」といって、不登校になりました。

当時、弟のSくんは学校にはなんとか登校していましたが、行きしぶりが激しく、やっとのことで、登校しているような状態でした。

そしてのちに姉のIさんの不登校が解決すると同時に弟のSくんの不登校が始まるという非常にご両親にとって辛いパターンになりました。

 

また不登校の子には大変多いことなのですが、「自分から人に話しかけることができない。」という不安を2人とも強く持っていました。

自分から話しかけることができないのは、「何を話していいのかわからない。」という以外に、自分が相手に話しかけることによって、「相手を不快にさせてしまうのではないか。」という不安が根本にあります。

この問題点を生んだそもそもの原因は、ご両親の言葉がけや考え方、価値観にありました。

 

ご両親は私のところに来るまでに、さまざまな相談機関をまわっていましたが、いずれも姉のIさんの反応が芳しくなく、断念しました。

私のカウンセリングがIさんの反応が良かった唯一のところだったのです。

そしてもう1つ、実際に私のカウンセリングを受ける前に、私のホームページに載っている言葉がけを試してみて、IさんとSくんの表情がかなり明るくなったともおっしゃっていました。

 

2.不登校の解決のカギ

Iさんの不登校の解決のカギは、ご両親様が機能的な言葉がけをやめること、お母さんの帰宅時間が仕事によって遅すぎるため、その分を補うような言葉がけや接し方をコツコツ積み重ねていったことでした。

そして、お父さんにもイライラしないように気をつけていただきました。またご両親ともに子供の話を聞いて、共感するようにしていただきました。

 

特にご両親ともに公務員だったため、機能的な考え方が強いのが特徴でした。

この機能的な考え方に基づく言葉がけや態度、接し方が長年、蓄積してしまったことが、この2人の姉弟の不登校の素地をつくったとも言えます。

人間の考え方というのは一朝一夕に変わるものではありません。このため考え方を変えるのに約1年半から2年ほどかけました。

 

私のカウンセリングはゆっくりとしたペースで進みました。そして中学3年の始業式から、姉のIさんが登校を開始しました。

周囲のサポートもうまくはまり、それ以降は休むことはなく、Iさんは登校を続けて、その後で高校にも合格して、現在、高校生になりました。

 

しかし、姉のIさんが登校を始めた頃に弟のSくんがついに不登校になってしまいました。

これは不登校ではよくある話なのですが、姉弟がいて、誰か1人が不登校になった場合に、「残りの子まで不登校にならないでほしい。」という親の思いが強すぎて、逆に学校になんとか行けている姉弟の方に機能的な圧力を強めてしまうケースがあります。

Sくんのケースはまさしくそれでした。

 

そこで再び、私はカウンセリングで、Sくんに対するご両親の機能的な考え方を弱めていっていただきました。

そして、Iさんには、私は直接あまりカウンセリングをしなかったのですが、Sくんの場合は、私の不安のカウンセリングの反応が良かったため、かなり深掘りしたカウンセリングを私が直接行いました。

その中で、不登校の解決のポイントとして出てきたのは、Sくんのゲームやアニメの話にお母さんが深く興味・関心を持っていただくことでした。

その後、徐々にSくんの再登校は始まっていったのですが、それでも行き渋る時は、それをご両親に快く受け入れていただきました。

またお母さんからSくんのゲームやアニメに対して、何か深掘りするような質問をしていただくことも行いました。

そして、お母さんが夜遅く帰ってからで構わないので、Sくんと2人だけの時間をつくり、十分に話を聞いてもらいました。

こういった点がSくんの不登校の解決のカギになりました。

 

3. カウンセリング後どうなったのか?

さて、カウンセリング後、結果的に2人が自分からガンガン話しかけるようになったかというと、実はそうではありません。

相変わらず、2人とも、雑談が上手ではないままでした。

それでも、2人とも、学校へいくという大きな目的は果たすことはできましたし、自分たちの目標を持って、進学や職業などの夢を明確にして頑張り始めました。

 

注意していただきたいのは、夢を持ったら、目標を持ったから、頑張ったのではありません。

親御様の共感によって、頑張る力が生まれたから、夢を見つけることができたというのが正しい順番です。

特に2人とも将来、心理学系の進路を希望するようになりました。

今も2人は登校を続けています。弟のSくんの方は、学校を休みたいと思うことがたまにあるそうですが、それも親御様の共感がすることで、休むことなく、安定的な登校を続けることができています。