1.不登校になった経緯

Yくんは小学校高学年のあたりから、家で荒れ始めました。特にお父さんが夜勤で家にいないときは、お母さんとお姉ちゃんを相手に大暴れです。

S O Sを受け取ったお父さんが慌てて帰ってくるということも度々ありました。

その中で、Yくんは徐々に徐々に勉強にやる気を失い始め、中学入学後、しばらくたってから不登校になりました。

 

Yくんの不登校は、たった1つのきっかけがあったわけではなく、長年の共感の欠如と家庭内の愛着、つまり安心感のなさが積み重なったのが原因でした。

具体的にいうと、お父さんはとても家族への愛情が強い方だったのですが、メンタルがとても不安定でした。

自己肯定感も低いため、何かあるとすぐに落ち込んでしまったり、お子さんに強く厳しくあたってしったりすることがよくあったのです。

 

そしてお母さん自身が、全く共感も愛着もない家庭で、ほぼ放置状態で育てられていたため、子供の愛し方や良い関わり方が全くわからなかったのです。

お母さんはYくんの話を聞いていても、共感のつもりで、話をすり替えてしまったり、Yくんや旦那さんの論点とは違うことを突然、言い始めたりすることがしばしばありました。

また特にYくんは、男の子で、どちらかというと元気で活発、ほんの少しやんちゃな感じのする子でした。

お母さんは、その面が女性として、なかなか理解できないため、活発な部分に対して、不快な表情をすることもしばしばありました。

結果的に、Yくんの劣等感は強まってしまいました。

 

そしてYくんは不登校になってから、重度のゲーム依存、スマホ依存、ネット依存になり、それを危惧した両親がゲームやスマホを取り上げようとすると、ナイフを持って暴れ回ったり、家の外に飛び出したり、さらに落ち込みも激しく、家の押し入れに閉じこもったり、部屋から出て来なくなるということもしばしばありました。

Yくんの口ぐせは「めんどくさい。」「死にたい。」だったので、最初、Yくんのうつを疑ったご両親は、さまざまなメンタルクリニックにYくんを連れて行きますが、全く改善しませんでした。

そこで不登校セラピーのホームページをご覧になり、子供ではなく、親を変えるという考え方とホンモノ共感というものにピンときたお父さんの主導でカウンセリングを開始したのでした。

 

2.不登校の解決のカギ

Yくんの不登校の解決のカギは、ご両親のホンモノ共感がまず大きく効果を発揮しました。

ご両親は、最初のころはYくんの状態そのものに、なかなかうまく共感することができませんでした。

ご両親は少しずつ、少しずつ、Yくんの話を聞き、その気持ちや感情、「学校へ行きたくない。」「朝、起きれない。」「死にたい。」「めんどくさい。」といったYくんの話を聞けるようになっていきました。

 

そして、もう1つの鍵はYくんのお姉ちゃんへの対応でした。

これも不登校の解決事例ではよくあることなのですが、不登校の子、本人そのものよりも、ご両親が姉弟への共感や対応を改善することによって、不登校の子も連動して、改善が見られるということがよくあります

この効果はとても大きく、お姉ちゃんへの対応を徹底的に改善していただくことによって、Yくんの状態もみるみる良好になっていきました。

そして激しい姉弟喧嘩を繰り返していたのが、とても仲のいい姉弟に変わっていきました。

特にお母さんがホンモノ共感を少しずつ覚え始め、お姉ちゃんにもホンモノ共感ができるようになり始めてから、弟のYくんが再登校を開始しました。

 

この家族間の複雑な愛着関係をうまく利用して、不登校の改善の原動力とするということは、難易度が高くて、経験と技術が必要なことではありますが、私はしばしばこの方法を取ります。

この方法であれば、家族間の愛着関係がよりうまい具合に変わるからです。

 

そしてYくんの不登校の解決に大きな影響を与えた、もう1つの問題となったのが、Yくんの友達依存でした。

「嫌われ不安」がとても強いYくんは不登校になる前から、友達につくしすぎでした。

Yくんは、友達と遊んで楽しくはあるものの、帰ってくるとぐったりと疲弊していました。

不登校の期間中も、友達と遊ぶものの、同じような状態が続き、「嫌われ不安」によって身動きが取れない。友達と遊びたいけど、遊ぶのが怖いという状態になってしまいました。

 

この子供の「嫌われ不安」を改善する方法も、親御様のホンモノ共感と言葉がけ、そして家庭内の荒れた空気を優しく、柔らかく、明るく変えていくことなのです。

「嫌われ不安」も一朝一夕に良くなるものではありませんので、かなり時間がかかりました。

時間をかけて取り組んだ結果、今ではYくんは「友達は友達」、「人は人」、「自分は自分」とキレイに線引きできるようになりました。

 

そしてYくんには、もう1つ問題がありました。学校に登校はできるようになったものの、なかなか勉強が手につかないという問題でした。

なぜ、Yくんは勉強が手につかなかったのか?

その原因はYくんの奥底深くに眠っていた劣等感でした。

「自分はダメな人間である。」という思い込みが、努力を阻んでしまっていたのです。

 

これを私がYくんとの直接のカウンセリングで、特別な技術「解除」を使って、「自分はダメな人間である。」という思い込みを消し去ることによって、徐々に徐々に劣等感が改善していきました。

その結果、現在Yくんは、大学受験に向けて、少しずつ受験勉強が手につくようになってきました。

Yくんは将来、「カウンセラーや臨床心理士になりたい。」と言って、心理学系の大学に進むことを考えています。

 

またYくんのお父さんは、総務部で社内の労務問題を担当していたのですが、そこでうつや出社拒否の状態、よく休む社員の相談にホンモノ共感を活用しました。

それによって、実際、出社拒否の状態が強かった社員が安定に出社して仕事ができるようになりました。

こんなふうにホンモノ共感によって、Yくんの不登校が解決されただけでなく、家庭、仕事の場でも良い結果がでています。

現在は最後に残った問題、お母さん自身が全く愛されずに育ったことに起因する若干の共感のずれを直すということに私とお父さんで取り組んでいます。