1.不登校になった経緯

あなたは不登校の1つの引き金として、トイレやオナラがあることをご存知でしょうか?

  • 授業中にオナラをしてしまう。
  • 授業中にトイレに何度も駆け込む。
  • 他の生徒の前で、大腸のトラブルを露呈してしまう。

当然、ものすごく恥ずかしい事であり、自己肯定感が低い子がこれをやってしまうと、次の日からもう1度、同じことが起きたらどうしよう。」という不安で、学校に行けなくなってしまいます。

Nさんもそんな女の子でした。

 

最初にこの問題が起きたのは、Nさんが小学校の低学年の時でした。

Nさんの小学校の給食で、ある日、地元の名産品の玉ねぎが大量に出されました。玉ねぎは、いかに調理しようとも、食べれない子は食べれないものです。

Nさんはもともと玉ねぎが苦手な上に、食べるのが遅いことが災いして、ある日の給食で、玉ねぎを食べきることができませんでした。

午後の授業が始まっても、先生は許してくれずに、授業中も食べ終わるまでずっと一人だけ、机の上に給食を残されるという事態になりました。

結局、午後の授業が終わっても、Nさんは玉ねぎを食べ切ることができずに、先生から散々悪態をつかれて、その日を終えました。

Nさんはこの日、強い羞恥心を感じたことで、人前で目立つことに対しての羞恥心を初めて感じたのです。

 

そして小学校5年生のときに、運動が苦手で、人の前で目立つことが嫌いなNさんは、学校の廊下でみんなが体育座りをしたときに、その姿勢によって、思わずオナラが出てしまいました。

おそらく近くにいた人は、Nさんがオナラをしたことがわかったはずです。

それに気づかれてしまったことと、さらに自己肯定感の低さからくるストレスで下痢をしやすくなっていたNさんは、授業中に何度もトイレに行くようになってしまいました。

これによって、Nさんは一気に精神状態が悪化して、その数日後から全く学校に行けなくなってしまいました。

 

お母さんは、さまざまなカウンセラーにあたるものの、誰一人として有効な解決の手を打つことができませんでした。

そこでやっと巡り合った不登校セラピーに一縷の望みを託して、お母さんはNさんとともにカウンセリングを受けることになったのです。

 

2.不登校の解決のカギ

さて、オナラをしたり、下痢をしたりすることの不安そのものをどうやって消せばいいのでしょうか?

「心配するな。」「大丈夫。」というのは全く的を得ていません。

それに心配しなくていいものであっても、「心配するな。」と言われて、「ああ、そうか。」と納得できる人なんてもちろんいません。

 

オナラと授業中の下痢の不安の本質は何かというと、それが起きたらどうしようでは、実はないのです。

この不安の本質を見誤ると解決できなくなります。

オナラと授業中の下痢の不安の本質は、「それがもし起きてしまったら、その後、どうなってしまうのか。」そのことを怖れているのです。

 

「普通の人はそんなことはしない。人前でのオナラや頻繁な下痢での授業の中座なんて、普通の人はしないのに、自分はそれをしてしまう人間である。

そんな自分は普通という常識的な枠から外れた人間である。みんなの普通という常識の枠から外れた人間は、みんなにとって、理解ができない宇宙人のような存在になってしまう。

普通という枠にいるのが地球人で、普通の枠からはみ出るのが宇宙人。

だから枠から外れたら、枠の中にいる人たちからは、理解をされないし、共感もされない。つまり自分は、みんなの仲間になれない。」

こんな思い込みがあるので、オナラと授業中の下痢を不安に感じ、怖れているのです。

 

おわかりでしょうか?

問題の本質は、オナラと下痢にあるのではないということです。

そしてこの問題が根深いのが、もう1つの問題の根源があるのです。

それは努力至上主義です。

 

「嫌なこと、辛いことを我慢して、努力できる人間がこの社会で価値ある人間である。」

これは不登校の親御様に大変強く根付いている価値観です。

普通という常識の枠ががっちり強く、努力、頑張ることが当たり前。これは実はNさんのお母さんの強固な価値観でもありました。

 

幼稚園時代からほんの少し枠からはみ出るようなところがあったNさんに対して、お母さんは「いかに枠からはみ出ないか。周りに合わせるか。集団と同じことをやらせるか。」を熱心にNさんに教え続けました。

また、嫌だという感情を抑圧し、努力を続ける姿をNさんのお母さんとおばあさんが2人で、Nさんにお手本として示し続けました。

この2つによって、Nさんにはかなり強い不安と恐怖が生まれました。

 

「自分にはそれができない。しかし枠から外れると宇宙人扱いされて、全く理解も共感もされなくなる。」

この強い不安と恐怖が最初に爆発したのが、玉ねぎ事件でした。それ以降、Nさんは常識の枠に収まらないということの不安が顕著になり始めたのです。

 

この不安の解決のカギは、お母さんの価値観を変えることでした。

「普通、常識、当たり前、努力、我慢。」こういった価値観は、子育てには全く適さないのです。

だからお母さんには、子供の健全な発達を阻む、価値観を徹底的になくし、変えてもらいました。

その上で、枠から外れようが、どうであろうが、Nさんに共感できるようになることを重視していただきました。

 

そしてNさんのおばあさまにも協力を要請しました。

上の年代の方に非常に強い、我慢や努力というものをやめて、弱さを隠さず、我慢をせず、家族間で助け合えるということを重視していただくようにしました。

その結果、徐々に徐々にNさんは登校できるようになりました。

 

そして中1になってから、安定に保健室登校ができるようになりました。

その後、私から学校の先生へのご指導もさせていただくことによって、Nさんは教室に安定に通うことができるようになりました。

Nさんの不登校の解決のカギの最も重要な点は、こんなふうに周りの子と同じことをNさんに求めるのを一切、やめていただいたことだったのです。