あなたは世の中の子育て本のほとんどのタイトルが、「子供の褒め方、叱り方」になっていることに気づいていましたか?

「ほんとかな?」と思った人は今すぐ書店にいって、私が言っていることがほんとかどうか、確認してみてください。

もちろん若干の例外はありますが、ほとんどの子育て本のタイトルは「子供の褒め方、叱り方」になっています。

このことに気づいたとき、私は愕然としたことをよく覚えています。

 

子供を褒めるか、叱るか、これしか観点がない・・・

従来の子育ての専門家と呼ばれる人も、おそらくこの観点しかもっていないのでしょう。

不登校解決の分野においても、多くの不登校の解決の専門家と呼ばれる人が、不登校を解決するには「ゲームを取り上げて褒めろ。」と言っています。

褒めることによって自信をつける、自己肯定感をあげるというものです。

それを真に受けた私は私自身の個人カウンセリングを受けてくださった方に褒めることをかなり推奨していた経験があります。結果はというと、私自身の印象ですが、褒めることの効果はほぼないと思っています。

心理学の世界では褒めることの功罪について、かなりの研究がなされています。

褒めることを推奨する人たちのほとんどは、「何ができたか、できないか。」「何をやったか、やらなかったか。」に着目して褒めています。

 

私の講座ところにお越しになったあるお母さんは、私の講座に来る前に「ゲームやネットを取り上げて、ほめる。」ことを教える不登校の解決の専門家の指導を仰いでいました。

こういう経験をされている親御様はとても多く、みなさん迷われて悩んでいるので、褒めることは全く悪いことだとは思っていません。

ただ日常なにもせず、家で携帯を眺めているお子さんに対して、何もほめるところがないと焦ったそのお母さんは「歯磨き、よくできているね。」と褒めたらしいです。

それを聞いたそのお子さんは「何言っているの!」とすごくしらけた様子で、その瞬間にお母さんは「ああ、これはダメだ。」と感じました。

これは全くダメな褒め方です。

 

私が子供の頃に「あなたはこれができる。」「あれができる。」と褒められていたら、どんな大人になっていただろうかと思うと、恐ろしい面があります。

私自身の個人カウンセリング経験を通じて、子供の自己肯定感を一番左右する重要なものはホンモノ共感であると気づいてから、私は自分の子供を褒めなくなりました。

私自身、娘を褒めたことは実はほとんどありません。それでも娘たちは立派に育っています。

 

「褒めるか、叱るか。」「アメとムチを与える。」という安っぽい心理学的な考え方で子供を育てると必ずといっていいほど、親がしっぺ返しをくらいます。

ちなみに私自身は褒めることそのものを否定しているわけではありません。ですが私はいい褒め方というのはあまり思いつかないです。

だいたい褒めるとなると、「何ができるか、できないか。」「何が優れているか、劣っているか。」という点にいかざるをえないからです。

だから褒める言葉はある程度、子供の中に残ると思いますが、不登校の原因となっている、自己肯定感の低さ、つまり自分は何かができないから人から冷たい目でみられるという感覚を払拭するにはいたらず、逆に強化しかねないと思っているからです。

 

実際に不登校の個人カウンセリングをしていると、お子さんに不足しているのは褒め言葉ではないことがわかります。

もちろん全く褒めていないというケースは、それはそれで問題だとは思いますが、ホンモノ共感の不足こそがお子さんの自己肯定感を下げる主たる要因でした。

ゲームをとりあげて褒めれば不登校は解決するという甘い言葉におどらされて痛い目を見たという方は大勢いると思います。とてもコンセプトがわかりやすく、子供にとってもいいことのように思えるからです。

しかし残念ながら私のところには、こんな声がよく寄せられています。

 

・うまくいきませんでした。

・余計に親子関係が悪化しました。

・学校に行くのは週に1日か2日程度でほとんど休んでいます。

・不登校が悪化して、引きこもりになりました。

 これはとても残念で悲しいことですよね。

 

褒めることで不登校の子にどういう影響を与えるのか?

しっかりとした理論と経験のもとに褒めることの功罪を伝えられるカウンセラーの指導をうけないと、本当に親子ともにもっと苦しむことになってしまいます。

とはいうものの、ゲームをとりあげて褒めれば不登校は解決するという言葉に踊らされる方々の気持ちもよくわかります。

私も子育て初心者のときは、子供のいいところをほめて伸ばそうという価値観がありました。

しかし不登校の個人カウンセリングを通じて、子供の自己肯定感がなぜ下がるのかがわかってくると、いいところを褒めて伸ばすということがいかに無力かということがわかってきました。

 

実際、私の不登校の個人カウンセリングを受けたお子さんの中にはこんなお子さんたちがいます。

・小学校5年生にしてある競技の世界チャンピオンになった子

・小学生のうちから親も周囲も絶賛するような美貌をもった女の子

・中学生にしてTOEICC満点をとった帰国子女でない男性

・幼少期から積極的で活発でみんなのリーダーをかってでるような前向きな女の子

 

こんなすばらしい特質を備えた不登校の子たちがたくさんいました。

この子たちはことごとく「自分はダメ人間だ。」と思っていました。能力の高さ、積み重ねた努力がなんの自信にもなっていないのです。

私自身の経験でいうともう1つ「結果をだせば自信につながる。」という神話に対しては、「結果がでれば、いっとき不安が安らいでほっとする。」という効果がある程度だと思っています。

 

ここまでの話をきいて、みなさん自身はどう感じましたか?

褒めたことがいっぱいあるという親御様も、そうでない親御様もいると思います。

ですがゲームをとりあげて褒めれば、再登校するという甘い言葉に踊らされるのはもうやめてください。

子供を褒めたいなと思ったら、本人がどういったところに意識をおいて、どういったことを粘ったのか、苦境の中をがんばったのか、何に耐えたのかなどをよく理解してあげるというスタンスに変えてみてください。

 

何度も言いますが、私は褒めること自体を否定はしているわけではありません。

ですが、褒めることで子供の自己肯定感があがるかというと、かなり疑問視される面があるのです。

これは実際、数々の心理学の研究によっても実証されています。

結果だけを褒められた子はやる気を失うなどの研究結果がとても有名です。

 

子供が本当に欲しいものは何だと思いますか?

私は褒め言葉ではないと思います。

それよりも親がいかに自分の内面に気づき、寄り添っているか、そこを気づいてくれているか、そこが欲しいのだと思います。

それが形として褒め言葉になったのであれば、それは構わないでしょう。

 

こう考えると、今世の中に溢れている子育て本や不登校解決方法に私は大きな危惧をいだいています。

あまりにも薄っぺらく、本当のことをわかっていない面が強いからです。

実際、お子さんを褒めて自己肯定感を上げようと思って、ゲームを取り上げて、褒めるところがなくて苦労した方々、いっぱいいますよね。

不登校の子の親御様自身の幼少期の話をきいても全く同じです。

親御様たちが口々にいうのは、もっと自分の親に褒めて欲しかったということではありません。そんなことを言う人は一人も私の記憶にありません。

みなさん口々にこんなことを言っています。

 

「もっと話をきいて、気持ちをわかって寄り添って欲しかった。」

「怒らずに私の話を聞いて欲しかった。」

「優しい言葉をかけて欲しかった。」

「もっと共感して欲しかった。」

この不足感は世代間連鎖を経て、必ず自分の下の世代の子供に伝わります。必ず、そして絶対です。

だから、自分でこの問題に気づいて、負の連鎖を止めよう!そのためにホンモノ共感を実践しようとしない限り、必ず下の世代に伝わります。

 

親御様がどれだけ子供に優しいか、どれだけ子供のことを思っているかは、ほぼ関係がありません。

どれだけ饒舌に褒め言葉をかけられるかも関係ありません。褒められるような能力や表面的なことは本質的な自己肯定感とは関係がないからです。

 

何度も繰り返しになりますが、人間が健全な集団適応力を得るために必要なものは褒められるということではありません。

学問の世界においても、何が必要なのかはわかっています。それは褒めることではありません。

子供に安心を与えるホンモノ共感です。

 

親御様のホンモノ共感が欠けると集団適応力が育たず、子供は不登校になります。

子供のときに不登校や引きこもりにならない場合でも、大人になってから「働けない。」「出社拒否。」「働けるけれども常に不安や恐れをかかえている。」

こんなふうに対人関係のトラブルを抱え込みやすい状態に陥ってしまいます。

これらの問題は褒めても解決しません。褒めれば褒めるほど、むなしいものを生み出してしまいます。

この感覚、お分かりいただける方が多いのではないでしょうか。

 

だからもし、子供の不登校を解決したいと思うならば、今もっている心理学の常識を全部捨ててください。

特に褒めるということに対しては、深い配慮をもって、心の中を見た上で褒めるということをしてみてください。

決して「歯磨きできるね。」とか、「姿勢がいいね。」とか、「あれができるね。」とか、「これができるね。」などと褒めないでください。

もし、こういった言葉で褒めると、あなたのお子さんはしらけて、親子の信頼関係をますます薄っぺらいものにしてしまうでしょう。

 

私は子供を褒めていません。その代わりいつも穏やかに共感しています。

私は娘の話を心で聞いています。娘が赤ちゃんの時から、言葉になっていない娘の気持ちを共感で聞いていました。

褒めるのは犬の躾と同じです。あなたのお子さんは犬ではないはずです。犬に芸をしこみたいなら、褒めればいいかもしれませんが、そんなことあなたはしたくないはずです。

ならば褒めるか、叱るかという薄っぺらい軸から離れて、深く深く心に共感するという軸をもちませんか?

それが腹におちたとき、必ず不登校は解決します。ぜひあなたもやってみてください。

 

ホンモノ共感クイズ「もう遅い」

前回のホンモノ共感クイズには3名の方から回答いただきました。ありがとうございます。

ヌクイアイさん、シンプルですがよく共感なさっていると思います。

まあやさんの共感も好ましいと思います。

さくらもちさんの共感も上手ですが、ちょっとだけひとごと感、他人事感がただよいますね。

ほんの少しだけですが、お子さんのこの言葉を聞いて、親として悲しいという気持ちはとてもよくわかります。ですが、それをプラスにポジティブに「あなたは大丈夫。」ということを言ってはいけないのです。

さくらもちさんも内面ではその気持ちがありながらも言葉にはださないように意識していますね。決して伝えないでください。

 

この問題の本質はお子さんが周りとの差を感じ、自分が周りから置いていかれるという「追いつけない不安」(新井が命名)を感じてしまっていることです。

「追いつけない不安」も前回、前々回にお話したような周りから置いていかれる、つまり冷たい態度をとられるという不安に基づいています。

この「追いつけない不安」に切り込んでいくのが1つのホンモノ共感のやり方です。

周りに追いつけない、周りは自分を置いて、さっさと前に進んでしまう。この「追いつけない不安」に対してホンモノ共感するのです。

 

ここでみなさんの歯をくいしばるところが明確に現れます。

子供をポジティブにもっていこうとしてはいけないのです。褒めてもいけません。全く効果がありません。

褒めて自己肯定感があがるなら、私もいっぱい褒めるんですけどね。

共感のポイントはいかにこの「追いつけない不安」に寄り添うか、深く理解するかです。

 

ホンモノ共感クイズ「SNSトラブル」

あなたのお子さんは不登校で不登校になってから、SNSに深くはまって、ずっとSNSをやっています。

最近、SNSで知り合ったある人から、お子さんがあるきっかけで、攻撃されました。

あなたのお子さんは嫌われ不安が強く、自分軸もないのでお母さんに聞いてきます。

「お母さんだったら、この人のことどうする?」

こんなふうに聞かれた場合、あなたならどのようにお子さんに答えますか?

 

ネットでの炎上やSNSトラブルというのはよく聞きますよね。

実際にあなたのお子さんがネットで知り合った人から攻撃されたと考えて、その対応に悩んでいるお子さんにどのような言葉をかけるか、深く考えてみてください。

あなたが考えるホンモノ共感の言葉がけを6/19(月)17:00までにブログにコメントしてください。

来週6/21(水)に私が考えるホンモノ共感の言葉がけをお伝えしますので、この機会を活用して、不登校の改善に役立ててくださいね。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。